はみ出る生活

穗浪衣里<イラストレーション制作・アートディレクション>のブログです

希望は1cm

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昔から「標準」に憧れていた。

 

平均、普通、Mサイズ。

素晴らしいじゃないか。なんて平和な響きだろう。

 

できれば自身もちょうど良い状態でいたいものだけれど

努力ではどうにもならない、しかしギリギリ生きていける程度の規格外を抱えて

日々ゆるゆると過ごしている。

 

***

 

小学校6年生の時点で靴のサイズが26cmになった。

義務教育の間はスニーカーだったりローファーだったりと

割と融通のきくものを履くことが殆どだったので

そこまで困らなかった。

たまに出かける際には当時流行っていたミュールやサンダルで

何とか誤魔化していたのだ。

 

 

が、大学入学を控え事態は一変する。

メイクを本格的に勉強し始めたところで

いつまでもコンバースばかり履いていては

それなりのキャンパスライフは迎えられない模様だ。

 

パンプス!

とりあえずパンプスが必要!

 

 

これが、以降延々と続く靴ジプシー生活の始まりだった。

地方大学、ドのつく田舎在住だったので近所に大きい靴を売っている場所などなく

使い慣れないインターネットで血眼になって探す。

楽天もあまり整備されておらずゾゾタウンもない時代、

とにかくショップのサイトを直接探し当てる他になかった。

 

ワシントン、タルサタイム、テン、SEVEN AND A HALF、卑弥呼などなど・・・

 

サイズが大きいだけでなく足の甲が平均より薄めらしく

ストラップのないパンプスを履くとカパカパしてつっかけ状になる有様。

吟味して取り寄せた商品が果たしてフィットするか否か

賭けでしかなかった。

 

長らくこんな日々を続けた末、数年前ようやく

自分の足に近い型のブランドに遭遇。

 

FABIO RUSCONIのパンプスなら

多少小走りしても本体が前に吹っ飛ぶこともないことが分かったのだ。

 

しかしこのブランドも大きいサイズは

限られたデザインしか日本で取り扱いがなく

相変わらず道ゆく淑女たちの足元に羨望と諦めが混ざった

視線を送ってしまう日々は続く。

 

 

あと2cm、せめて1cm。

他の箇所は大いに変動するのに

ここだけは一切変化のない

人体の不思議。